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大阪地方裁判所 平成12年(レ)125号 判決 2000年7月17日

控訴人

乾忠夫

被控訴人

松田秀仁

主文

一  本件控訴を棄却する。

二  控訴費用は控訴人の負担とする。

事実及び理由

第一控訴の趣旨

一  原判決中、控訴人敗訴部分を取り消す。

二  被控訴人の請求を棄却する。

三  被控訴人は、控訴人に対し、四万三〇五五円を支払え。

四  訴訟費用は、第一、二審とも、被控訴人の負担とする。

第二事案の概要

本件は、信号機により交通整理の行われている三叉路交差点で、控訴人運転の軽貨物自動車と被控訴人運転の軽貨物自動車が衝突した事故につき、当事者双方が各車両の物損について民法七〇九条に基づき損害賠償を請求した事案である。

一  争いのない事実

事故(以下「本件事故」という。)の発生

日時 平成一二年一月一五日午後六時一七分ころ

場所 大阪府交野市星田北四丁目三八番四号先(以下「本件交差点」という。)

車両一 軽貨物自動車(大阪四三そ二八〇五。以下「被控訴人車両」という。)

運転者 被控訴人

車両二 軽貨物自動車(大阪四三そ八五七五。以下「控訴人車両」という。)

運転者 控訴人

事故態様 南北道路に北東方向からの道路(以下「北東道路」という。)が合流する三叉路交差点(信号機による交通整理がなされている。)において、北東方向から本件交差点に進入した控訴人車両と、北方向から南に向けて本件交差点を通過しようとした被控訴人車両が衝突した。

二  争点

本件の争点は、<1>本件事故態様並びに過失の有無及び割合、<2>損害額である。

(1)  本件事故態様等(争点<1>)について

(控訴人の主張)

控訴人車両は、北東道路を南西方向に向かって進み、本件交差点の対面信号が青信号であったので、本件交差点に進入し、左折を始めたが、南行車線が渋滞していたため、控訴人車両前部が南行車線中央付近まで進入した状態(車両が左斜めになっている状態)で停車して待機した。その後、南行車線の先行車両が前進したため、前方を確認しながら徐行して完全に左折を完了し、そのまま南行車線を直進していた時、突然、後方から被控訴人車両が控訴人車両の右側部をこすりながら追い越し、控訴人車両の前方約五mの地点で停車した。

本件事故は、被控訴人の一方的な過失により発生したものである。

また、被控訴人車両が接触後すぐに停車すれば、両車両の損害は少なくてすんだはずである。

(被控訴人の主張)

被控訴人車両が本件交差点の対面信号が青信号になったので、北から南に本件交差点を進行中、控訴人車両(控訴人側の対面信号は赤信号)が北東道路から南行車線に進入し、被控訴人車両の左側に接触した。本件事故は控訴人の一方的な過失により発生したものである。

(2)  損害額(争点<2>)について

(一) 被控訴人車両

(被控訴人の主張)

本件事故により被控訴人車両の損傷した箇所を修理するには一五万円を要するから、本件事故により被控訴人は一五万円の損害を受けた。

(控訴人の主張)

被控訴人は、本件事故直後に控訴人車両の損傷部位を蹴っていたのであるから、本件事故による損害は被控訴人主張よりも低額である。

(二) 控訴人車両

(控訴人の主張)

本件事故により控訴人車両の損傷した箇所を修理するには四万六一〇〇円を要するから、本件事故により控訴人は四万六一〇〇円の損害を受けた。

修理費用の内訳は以下のとおりである。

フロントバンパー 一万八一〇〇円

フロントバンパー脱着取替費用 三〇〇〇円

右ドア一部板金塗装 二万五〇〇〇円

(被控訴人の主張)

控訴人主張の右ドアについての擦過痕は、水平方向と斜め方向の傷であり、本件事故によるものではない。

第三争点に対する判断

一  本件事故態様等(争点<1>)について

証拠(甲二の一ないし五、乙二、原審における控訴人本人、原審における被控訴人本人)及び弁論の全趣旨を総合すると、以下のとおりと認められる。

本件交差点は、片側一車線の南北道路に北東道路が合流する信号機により交通整理の行われている三叉路交差点である。

控訴人車両は、北東道路から本件交差点にさしかかり、本件交差点の信号が青信号であったので、先行車両に引続いて本件交差点に進入し、左折して南北道路の南行車線に合流しようとしたが、同車線が渋滞していたため、同車線に合流することができなかった。そこで、南行車線に進入する直前で停車し、渋滞中の先行車両が前進するのを待っていた。その間に、控訴人車両の対面信号は青信号から赤信号に変わった。その後、先行車両が前進し、南行車線に進入できる空間ができたため、控訴人は、前方を注視したが、右方を確認することなく、左折しながら南行車線に徐行進入したところ、控訴人車両の右後方から、南行車線を進行してくる被控訴人車両を目前に認め、そのまま控訴人車両前方右側と被控訴人車両左側面が衝突した。その際、控訴人は急制動の措置をとり、控訴人車両はその場で停車した。

一方、被控訴人車両は、北から南に向かい本件交差点にさしかかったが、対面信号が赤信号だったため、本件交差点手前の停止線付近で先頭で停車して待機していた。その際、被控訴人は、先行車両が本件交差点内で渋滞しており、また、被控訴人車両が南行車線に左折合流できずに停車しているのを認識していた。その後、対面信号が青信号に変わったが、先行車両が渋滞中のため進行しなかったため、しばらく待機していたが、先行車両も前進したため、被控訴人車両を発進させた。その際、被控訴人は、控訴人車両の対面信号が赤信号であるから控訴人車両が待機するものと考え、控訴人車両の前を通過しようとしたところ、控訴人車両が左折を開始して南行車線に進入しため、被控訴人が急制動の措置をとったが間に合わず、上記の態様で衝突した。

以上に対し、控訴人は、控訴人車両が左折して南行車線に合流した後に、被控訴人車両が控訴人車両を追い越し、その右側面に衝突した旨の主張をするが、証拠(乙二)からすれば、被控訴人車両の左側面中央部が凹損し、そこから後方に擦過痕が残っていることが認められるので、同事実によれば、被控訴人車両左側に斜めの状態になった控訴人車両前方右側部分が衝突したことは明らかであるので、控訴人の主張は採用できない。

以上認定事実を前提とすれば、控訴人は、控訴人車両が既に本件交差点内に進入していたとはいえ、その後、対面信号が赤信号に変わったのであるから、右後方(北方)から本件交差点に進入してくる車両があることを予測し、右後方の安全を確認してから左折合流(南行車線への進入)を開始すべきであったものであり、しかも、右方の安全を確認すれば、容易に被控訴人車両の進行を確認できたにもかかわらず、控訴人は、前方のみを注視して、右方の安全を確認せずに左折合流(南行車線への進入)を開始したものであるから、控訴人には本件事故について、相応の過失がある。

一方、被控訴人も、控訴人車両が左前方で左折合流するために待機して停車しているのを認識していたのであるから、前方の渋滞車両が前進した後に控訴人車両も左折合流(南行車線への進入)を開始することは容易に予測できたはずであり、被控訴人としては、控訴人車両の動静を注視しながら徐行し、又は、クラクション等で控訴人車両運転者の注意を喚起して進行する義務があったものであるが、被控訴人はいずれも怠り、対面信号が青信号である自分の方に優先権があると安易に考えて漫然進行したものであるから、被控訴人にも相応の過失がある。

以上、本件事故は、控訴人と被控訴人の過失が競合して発生したものであるところ、控訴人と被控訴人の過失割合は、五対五とするのが相当である。

二  損害額(争点<2>)について

(1)  被控訴人車両物損

証拠(甲一、二の一ないし五、原審における被控訴人本人)、前記認定の事故態様及び弁論の全趣旨によれば、被控訴人車両は、本件事故により、左側面凹損・擦過痕等の損傷を受け、修理の見積もりをしたが、現在まで車両を修理せずにそのまま走行していることが認められる。そうすると、見積書記載の修理費が相当かどうかが必ずしも明らかではなく、被控訴人自身が安価で修理できる旨を述べていることを考慮すると、本件事故による被控訴人車両の修理費用を一五万円と認めるのが相当である。

控訴人は、被控訴人が本件事故後に損傷部位を蹴っていた旨主張するが、本件車両の損傷状況及び事故状況を総合考慮すれば、被控訴人主張の損傷が本件事故による損傷であるものと認められるから、控訴人の主張は採用できない。

(2)  控訴人車両物損

証拠(乙一、二、原審における控訴人本人)、前記認定の事故態様及び弁論の全趣旨によれば、控訴人車両は、本件事故によりフロントバンパーに擦過痕等の損傷を受けたが、現在まで車両を修理せずにそのまま走行していることが認められる。そして、前掲証拠から認められるフロントバンパーの損傷の程度によれば、バンパーの取り替えまでは必要とは認められず、これを補修することが相当であり、その費用としては、被控訴人車両のバンパーの修理費用を参考(甲一のリヤバンパー脱着、同修理の項を参照)にして、同額の六〇九〇円を要するものとするのが相当である。

なお、控訴人は、本件事故により控訴人車両の右側部に擦過痕が生じた旨主張するが、本件事故態様及び控訴人主張の擦過痕の状態からすれば、控訴人主張の擦過痕が本件事故により生じたものと認めるに足りない。

三  結論

したがって、被控訴人の過失相殺後の損害額は、七万五〇〇〇円と認められる。また、控訴人の過失相殺後の損害額は、三〇四五円と認められる。

以上により、原判決は正当であるから、主文のとおり判決する。

(裁判官 中路義彦 齋藤清文 下馬場直志)

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